第2編 物質の変化

第3章 酸化還元反応

1酸化と還元 2酸化剤と還元剤

3金属の酸化還元反応

4酸化還元反応の応用

 酸化と還元

【酸化・還元の定義】  

 酸化の元々の意味は「物質が酸素と化合する」ということであった。また,還元は,「酸化されたものが元に戻る」ということで,酸化物が酸素原子を失うことであった。この他,水素原子や電子のやりとりでも,次(左下)のように定義されている。また,酸化銅(U)CuOと水素H2の反応を例に酸化還元反応を見る(右下)。

 
 
 
例題 次の反応で酸化された物質,還元された物質はそれぞれ何か。

(1) 2CuO C 2Cu + CO2   (2) Fe2O3 2Al 2Fe Al2O3

(3) CH4 2O2 CO2 2H2O   (4) 2H2S O2 2H2O 2S 

 

 (1) 酸化された物質COと化合),還元された物質CuOOを失う)  

(2) 酸化された物質AlOと化合),還元された物質Fe2O3Oを失う)

(3) 酸化された物質CH4(Hを失う,Oと化合),還元された物質O2Hと化合)

(4) 酸化された物質H2SHを失う),還元された物質O2Hと化合)

 

【酸化・還元と酸化数】

単体,化合物,イオン中の各原子の酸化されている度合いを示す数値を酸化数という。酸化数は電子の授受で考えていく。電子を失ったり,受け取ったりしていない状態は,酸化数0。電子を123,・・・個失う(酸化される)と酸化数は,+1,+2,+3,…となり,電子を123,・・・個受け取ると(還元される)と酸化数は,−1,−2,−3,…となる。酸化数は次の方法で形式的に決めていく。

 

@ 単体(1種類の元素からなるもの)中の原子の酸化数は〔 0 〕である。

A 化合物(2種類以上の元素からなるもの)中の各原子の酸化数の総和は〔 0 〕である。

B イオンの原子の酸化数の総和はイオン全体の電荷と同じ。例)Cu2Cuは+2

C 一般的に,化合物,イオン中の水素原子の酸化数は〔 1 〕,酸素原子の酸化数は〔 2 〕とする。

 

例題 次の単体,化合物,イオンについて,下線部の原子の酸化数を求めよ。

 (1) NH3  (2) HNO3  (3) N2  (4) SO42  (5) Cr2O72  (6) H2O2  

 (7) CuCl2  (8) Fe(NO3)3  

 

 それぞれ下線部の原子の酸化数をxとすると,

 (1) x(1)×3=0,x=−3   (2)  (1)x(2)×3=0,x=+5   (3) 0(単体なので )

(4) x(2)×4=−2x=+6   (5)  x×2(2)×7=−2x=+6  

(6)(+1)×2x×20x=−1(この場合,計算によって求める。結果的に−2にならない場合もある)

(7) CuCl2はイオンに分けるとCu2Cl2つなので,+2  

(8) Fe(NO3)3はイオンに分けるとFe3NO33つなので,+3

 

【酸化数と酸化還元反応】

 酸化数は,酸化されている度合いを表す値である。したがって,反応によって酸化数が増加した場合は酸化されている,減少した場合は還元されているということになる。また,反応の前後で酸化数の変化がない反応は,酸化還元反応ではないということになる。

 

例題 

次の化学反応中の下線部の原子について酸化数の変化を調べ,酸化されたか,還元されたかを答えよ。

(1) CuO + H2 → Cu + H2O   (2) Fe + H2SO4 → FeSO4 + H2

(3) SO2 + 2H2S → 2H2O + 3S   (4) 2KI + H2O2 + H2SO4 → K2SO4 + I2 + 2H2O

(5) MnO2 + 4HCl → MnCl2 + 2H2O + Cl2

 

(1) Cu 還元されている(Cu2Cuの変化+20),H 酸化されている(H2H2OHの変化0→+1

(2) Fe 酸化されている(FeFe2の変化0→+2),H 還元されている(H2SO4HH2の変化+10

(3) SO2S還元されている(SO2SSの変化+40),H2SSH2SSSの変化−20

(4) I 酸化されている(II2の変化−10),O還元されている(H2O2O→右辺のOの変化−1→−2

(5) Mn還元されている(Mn4Mn2の変化+4→+2),Cl酸化されている(HClClCl2の変化−10

   Clの半分はMnCl2Clへ変化している(酸化数の変化なし)。厳密には,半分だけ酸化されている。

 

例題 次の反応のうち,酸化還元反応でないものはどれか。

@ MnO2 + 4HCl → MnCl2 + Cl2 + 2H2O  A 2KI + H2O2 → I2 + 2KOH

B CuSO4 + H2S → CuS + H2SO4  C 2MnO4- + 6H+ + 5H2O2 → 2Mn2+ + 8H2O + 5O2

 
B すべての原子の酸化数を確認する必要があるが,反応式の中で単体が含まれているものは,基本的に酸化数が変化する。酸
 化還元反応ではない(酸化数の変化がない)ものを選ぶには,単体を含んでいないものに目をつける。